躁状態で来る患者はいない

精神科医は言った。「双極性障害の場合、患者は必ずうつ状態を訴えて受診します」はあ? そりゃそうだ。考えてみれば躁状態の時、人は元気いっぱいで全能感に満ち溢れている。なにもかもがうまくいくと、根拠のない楽観的な自信を持っている。

だから「先生、私は躁病ではないでしょうか?」と言って受診する患者はいないわけだ。大抵の場合は気分が塞ぎ込んでいるうつ状態の時に、精神科医や心療内科の扉を叩くのだという。私もそうだった。でも双極性障害の場合、うつ状態と躁状態が交互にやってくる。

で医師は続けた。「松坂さん、躁状態とうつ状態の、どちらが深刻だと思いますか?」うつ状態の時は本人に自覚症状があり、本人が辛いだけで周囲や社会に迷惑をかけることはない。自死でもしない限り社会に悪影響はない。

しかし躁状態の時は周囲に迷惑をかける。若い頃私は本物の躁状態の患者を職場で見たことがある。片っ端から取引先に電話して、上司の決済は全く受けず、どんどん契約していった。上司が気づいて彼を帰宅させ、慌てて各方面に連絡して契約を取り消していたが、後始末はなかなか大変そうだった。

これが躁状態か。恐ろしいな。と当時の私は思ったけど、まさか自分が高齢者になってから躁状態を患うとは、思ってもいなかった。しかし今の私は重篤な双極性障害を患い、通院して治療中である。現役を引退して年金生活者であるために、社会にさほど影響は及ぼしていない。

コメント

タイトルとURLをコピーしました